不輝城で過ごしていると、不意にお互いの言葉がまったく通じなくなることがあるそうだ。そのような時は、「ギンヌンラユマが口を開けている」と言い、人々は思いつくかぎりのほら話しを語り続けなくてはならない。
しかも、あまり面白い話しをしてはならず、とびっきりくだらないのを、誰の相槌も得られないまま、ひたすら、ラユマが呆れて口を閉じるまで、話し続けなければいけないのだとか。
馬たちの庭のそばにある大きな窪地は、昔は賓客をもてなす瀟洒な館が建っていたのが、面白い話しをしすぎた男のために建物ごとラユマに飲まれてしまった跡なのだそうだ。
ことが起こっている間は、どのような宴もなく、食事も就寝も、誰も語っていない時間がないように、注意深く案内される。それも言葉が通じないので、身振り手振りで伝え合う。城の者は、こういった時のための特別な手話を身に着けていて、城の仕事にはほとんど影響がないという。