不輝城夜話 三つの嘘の搭のこと

かの城のいずれの窓も、漠々たる夜に向かって開かれている。ひときわ高い【三つの嘘の塔】から眺め降ろせば、広大な原野が星明かりの薄闇にかすみ、遠くで山並みは音もなく身じろぎする。ほの見える道筋を明かりも持たない影たちが列をなして歩いて行く。しずしずと、どこまでも。見ているかぎり止まることがなく、見ているかぎり、夜の原野は広がり続け、いつまでも果てることがない。

この話しをしてくれた生真面目そうな書写生は、食事も忘れてまる二日その影に見入り、空腹で気を失ってやっと窓を離れることができたそうだ。