不輝城夜話 序

不輝城をご存知か。人の言うには、夢のあわいに落ち込むまぎわ、ふと足を踏み外してたどり着くとも、霧深きリスルーの谷の奥の奥、迷うのでなければたどり着かない獣道の果てにその影を見たとも聞く、堅牢なる玄石の城を。かつて世にあまねくその名を知られ、海の果てからも陸のきわからも客人の絶えることのなかったものが、尋常の世からもぎ取られてそのようにあると言う、ものさびしき漂泊の城を。

ながのむかしに別れてもなお、蜘蛛の糸のごとく吹きかかり、新しくも古くも巷に聞こえるその消息を、今宵ひととき、語って聞かせよう。