不輝城夜話 星の廊下のこと

星の廊下が不輝城の最も美しい場所の一つであることは疑いない。四節に区切られた、丸みを帯びた天井を、銀糸で綴った天片石の飾りが覆い尽くし、春夏秋冬の空を表現するこの廊下は、天片石がはなつ青白い燐光で、常に晴れ渡った新月ほどの明るさがある。壁面は夜闇石を張り、壁龕を縁どる飾りには、天片石はもちろん、鏡や琥珀、あまたの宝石に青貝と真珠がはめ込まれ、完成までに実に十五年を要したという。

不輝城で最も美しく、最も贅沢なこの廊下が造られたのは、この城が最も豊かであった頃だそうだ。すなわち、その罪ゆえに名を伝えることを禁じられた城主の成したことである。罪自体も、「いともおぞましき」「万民の想像を絶する」などと言うのみで、詳細は語られず、聞いた者の想像力の器となってさまざまに伝えられている。

さておき、この星の廊下は、あまりにも美しく造りすぎたせいなのか、恐ろしいものの目に留まり、特に夜中は、通ってはならない禁足の間となっている。何とも知れぬ恐ろしいものが、その廊下を通っていくというのだ。

それに遭って生き延びた者はいないそうだが、壁龕に置かれた彫像の陰にもぐりこんで辛くも難を逃れた者の話しでは、それが現れる直前に、馬の大群が走ってくるような音がしたのだとか。彼と一緒にいた連れは、全てが通り過ぎたときには、文字通り粉々になっていたそうだ。彼と同じ隙間に潜り込もうとしたために、廊下へ押し戻してしまったのだと、涙ながらに話してくれた。