不輝城の花園から花を持ち帰った人の話しをしよう。
それは裕福だった一人の男で、不輝城の主にたいへん気に入られ、城のもので手に持てるものならば何でも持ち帰ることを許された。ただし一度掴んだあとは、選び変えることは許されなかった。
彼は不輝城の姫を捕まえようと七転八倒試みたが、最後に花園で足をもつれさせ、転んで起き上がろうとした時に、意図せず掴んだ花木の枝が折れたので、それを持ち帰ることになった。彼はそれを妻に与え、妻はそれを庭に植えたが、誰もそのような木は見たことがなかった。
その木はぐんぐん成長し、彼らの庭を呑み込み、家を呑み込み、街と人も呑み込んだ。しかし悪食の木はその一本きりだったので、百年経って種を残さず枯れたそうだ。
大量の花びらと枯れ枝の積もった街の跡が今もスルーニライに遺されている。