すすり泣いているリリを置いて、ダンとカナはその場を後にした。もしリリが戻るときに穴を開けたとしても、後でカナが繕えばいい。
淡々と《夢世界》を歩きながら、カナがぽつりと呟いた。
「こうするしか、無かったんだよね?」
しばらくの沈黙。
『そうは思わないな。そうならない道を選ばなかっただけじゃない?』
ダンの答えはいつも通りだった。なんの配慮もなく、正しい。
「厳しいなぁ、ダンは。なんか優しいことを言ってよ」
ため息と共にぼやいて、カナは腕をダンの首に回した。ダンは歩きにくそうにしながら、されるがままにしている。
『捨て方を知ってれば、拾い方も分かると思うよ。捨てるときの逆にすればいいんだから』
「そっか。それ、言ってあげて」
『……カナの選んだ道じゃ無かったよ』
「ダン、大好き」
カナはダンにもたれて歩きながら、むにっとその頬をなでた。薄い唇の下に、牙の感触を感じながら。