賜福者について 01

春の最初の朝日が昇るとき、わたしは泉のほとりの岩に腰かけて、西の空をながめていました。わたしと共に夜どおし起きていてくれた星たちがひっそりと目を閉じていくのを、みまもっていたのです。

わたしには、母から言いつけられた大切なおつとめがありました。わたしが前の年に七つになった、一族でただ一人の子どもだったから、魔法をかけるのに使う特別な水をどうしてもその日に、汲まなくてはいけなかったのです。

泉に朝日がさしこんだら、水がめにそれを汲みあげ、泉のまわりを一周します。時間とおなじ左回りに、南をまもるサンシュユと、西にねむるニワトコと、北をささえるミズヤナギと、東をそめるスミレの群れに、それぞれねぎらいの言葉をかけながら、汲んだ水をすこしずつ垂らします。そうして挨拶をしておけば、草木の精霊が水を守ってくれるのです。

あとは何に話しかけられようと、どんな音がきこえようと、けっして振り向いたり、口をきいたりしてはいけません。水がめの重さで手がしびれてきても、地面に置いてはいけません。祭壇きちんと置くまでは、だれかに触られてもいけないのです。

わたしは何度も練習したとおり、ひとつも間違えないようにやりました。すると母も父も、ほかの家族も、みんなわたしを誉めてくれました。その後はあたたかいお風呂に入れてもらって、はちみつをたっぷり入れたミルクと、干した果物がざくざく出てくる焼き菓子のかたまりをもらって。寒かったのも怖かったのも、それで忘れてしまいました。小さなわたしも、魔道士の一族として、りっぱに役目をはたしたのです。

このときわたしが、一つでも手順をまちがえていたら。

舌がもつれて、言葉がうまく出てこなかったならば――

このときの朝の光を、なつかしい花々の加護を、わたしが呪うことはなかったでしょう。